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■第11回
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他院で施術をうけた結果を拝見する機会が多いのですが、植毛手術について間違った情報をインプットされた方々が多いのには驚きます。
植毛関連のホームページには自画自賛の誇張が多いのですが、それで集客を図ろうとする目的で作る涙ぐましい努力も理解できますし大目にみることにしましょう。
ただどうしても見逃せない事例もあり、今回はそのようなウソについてとり上げてみようかと思います。
●FUTのウソ
今年9月に横浜で美容外科関係の学会が開催されそこで毛髪治療についてのシンポジウムがありました。
その中で2名の演者が現在行なわれている植毛手術イコールFUTという意味で話をすすめているようなので私は『あなた達の言うFUTの定義はいったい何ですか?』とたずねてみました。
1人は『フォリキュラーユニット(FU)ごとの株分けを行なう植毛術です。』と答え、もう一人からは返答が得られませんでした。
私は植毛術イコールFUTといった意図について前者は知識不足のため、後者はおそらく意識的にそう発言しているのだと感じました。
欧米の医学の世界ではFUTはゴールドスタンダード(その時点で考えられる最良の方法)とされていますし、インターネット上でもそう認識されているので彼は口演で自分の行なっている植毛法をFUTとごまかしたにちがいありません。
FUTとは何か?についてここでその定義の確認をしたいと思います。
植毛の歴史をひもとくと、1959年にニューヨークの皮膚科医Orentreichがパンチ式植毛術を発表し以後30年間この方法が標準術式として続きました。
パンチグラフトは3~4㎜径の大きさの株で1株に10本ほどの移植毛が含まれています。
これを使って3~4回施術をくり返して薄毛の範囲をカバーしたわけですが、どうしても田植え状態の不自然さがありました。
これを克服する意味でパンチグラフトを小さくし(たとえば半分にするとハーフグラフト、4分の1にするとクォーターグラフト)、移植毛が3~6本含まれる2、3㎜径の株はミニグラフト、1~2本のものはマイクログラフトと呼ばれました。
マイクロやミニグラフトは始めはパンチグラフトの不自然さをカムフラージュする存在でしたが1990年代初めにブラジルのUebelがそれらだけで植毛を行なうマイクロ・ミニ植毛法を発表し、以後爆発的に普及していきました。
以上のパンチグラフト、ミニグラフト、マイクログラフトというのはすべて株の大きさによる分類です(図1)。
図1 従来のサイズ分類
1990年中頃にフォリキュラーユニット(FU)ごとの株分けがテキサスのLimmer医師によって提唱されRassman医師, Bernstein医師らもその方法について多くの論文を発表し植毛術の主流におどり出て現在に至ったわけです。
FUとは1本~3本(4本は日本人ではとてもまれです。0~1%)の硬毛と1~2本の産毛それと付属組織を含む毛穴の解剖学的単位です(図2)。
図2 FUの定義
・1~4本の硬毛
・1~2本の軟毛
・起立筋
・平均9個の皮脂腺の分葉
パンチ式植毛法、マイクロ・ミニ植毛法では帯状のドナーの頭皮を細かく面に分割するのに対してFUはその1コ1コが頭皮に存在する島つまり点だととらえられます。その点ごとに株分けするわけです。そこが従来の方法と大きく違う概念です。
現在は株の分類も従来のサイズ分類ではなくFUを基本にされるようになりましたし、当然のことながらすべての医師はFUという単位を意識して株分けしているわけです(図3)。
図3 新しい株の分類(2004. W.Unger博士による)
●マイクロ株
2本毛のFUを2つの1本毛にするなど1コ以下のFUが含まれるもの
●FU株
1コのFUが含まれる株
●フォリキュラーファミリー株
2つのFUが0.2㎜以下の距離でくっついてあたかも1つのFUにみえる株
(実際にはダブルフォリキュラー株ですがこれは例外的にFUTに入れても良いとされています)
●マルチフォリキュラー株(MFU株)
2つ以上のFUが含まれる株
(2つのFUが含まれればダブルフォリキュラー株
3つのFUが含まれればトリプルフォリキュラー株
パンチグラフトもこれに含まれます)
さてFUTの定義は図4のようになります。
図4 FUTの要件
・ドナーを採取するときにマルチブレードナイフを使用しない
・すべての株分けを顕微鏡下で行う
・すべての株は原則として1つのFUを含む、したがって1株のサイズは平均2本前後となる
・おのおののFUの間の皮膚( hairless skin )は取り除く
・株を植え込む際にスリットを用い、パンチは用いない
FUごとの株分けがすべてFUTと呼べるならFUTにはパンチグラフト、ミニグラフトなどのMFU株も含まれることになってしまいます。
MFU株を用いた場合にはFUTとは呼べないというのが99%の植毛医のコンセンサスです。
『1つの株の中にはたった1つのFUを含む、つまりすべての株をFU毎に株分けをする』は絶対にはずせない要点です。
最近FUTの医師達からは、『インターネット上ではミニグラフトというのは評判が悪いのでMFU株という隠れ蓑をつけているだけではないか、MFU株というのは実際ミニグラフトと同じなのでこんなまぎらわしい呼び方はやめよう。』という意見が出てきています。
それに対してMFU株をつかう医師は『現在は顕微鏡をつかっての株分けだから昔のミニグラフトとは違う。』と主張していますが、『それなら“顕微鏡で株分けをしたミニグラフト”と呼べば良いではないか。』とまた反論されています。
このように堂々とMFU株を使っていることを主張するならともかくFUTの評判が良いからといって、MFU株を使っているにもかかわらずそれをかくして意識的に自分達の方法をFUTと呼ぶのは厚顔無恥といわざるをえません。
(第一回コラム『FUT vs MFU株とFU株のコンビネーション』を参考にして下さい。)
●メガセッションのウソ
メガセッションとは一度の手術に2500株以上を植えつけることであり複数の手術の合計の株数についていっているのではありません。
欧米では一度に多くの株数を競うのがトレンドになっており最近はギガセッション(一度に5000株を植えつける技術)も登場して、2度のメガセッションと1度のギガセッションどちらが良いのか?という討論さえ行なわれています。
私達日本人は白人と比べ20%ほどドナーの密度が低いとされ1度に3500株以上とるのは至難の業でうらやましい限りの討論ですが、薄毛の程度によっては多くの株が必要なケースは多いと思います。
一度に2500株以上はおろか2000株以下の植えつけしか行なえないにもかかわらず自分達に都合の良い解釈をしてメガセッションを行なっているとPRするのはこっけいな話です。(第9回コラム『メガセッションについて』を参考にして下さい。)
●移植本数のウソ
植毛術後に植えつけられた株数と移植本数について説明をうけたという方は多くありません。
それをうけた場合でも正確な移植本数だったか疑問なケースがほとんどです。
移植本数を具体的に説明する時にはその根拠が必要です。
FUTの場合の移植本数は以下のように計算できます。
株分けが終了して集計し1本毛の株がX株、2本毛の株がY株、3本毛の株がZ株だあったとすると、株数はX+Y+Zとなり移植本数はX+2Y+3Zとなります。
MFU株をつかっている場合の移植本数を正確にカウントするのは不可能ですが、それでもあえてドナーの密度をもとにもっともらしい本数の説明をするクリニックもあるようです。
たとえば『あなたのドナー1c㎡に150本はえていたから29c㎡のドナー面積で4350本植えつけています。』と執刀医から真顔で移植毛の端数まで説明されたらあなたはその数字をまにうけてしまいます。
ドナー密度の平均が150本/c㎡より低い方は大勢いらっしゃいますし、仮に後頭部のドナーが150本/c㎡だとしても側頭部の密度の平均値は120本/c㎡程度ですから長い帯状のドナーの場合平均密度はぐんと下がってしまいます。
ドナー採取と株分けする過程で生じる毛根切断による移植毛の喪失(通常の方法で5%以上、オープンテクニックでも2~3%はありえます。)も差し引かなければなりません。
当然のことですが移植本数というのはドナー採取前の予想値ではなく、株分け後にカウントされる実数で説明されるべきものです。
カウントできない場合には説明するべきではありません。
●達成密度のトリック
一般的な達成密度とは日本人の場合、後頭部のドナー部の平均値80FU/c㎡を分母として、実際に植えつけた株数がX株/c㎡だとするとX÷80×100(%)で計算されます。
ちなみに白人では分母が100 FU/c㎡になります。
しかし達成密度を採取したドナーの面積によって説明するクリニックもあります。
その場合採取したドナー頭皮の面積をAc㎡、植えつけた薄毛の面積をBc㎡だったとすると達成密度はA÷B×100(%)で説明されることになります。
これを一般的な達成密度を比較してみましょう。
たとえばAが20c㎡でBが60c㎡の場合某クリニックでは達成密度はケース1~3のすべての条件の方々で33%と説明されます。毛根切断による移植毛の喪失が5%だったとすると、
( ケース1 )
ドナーの密度が平均の80FU or 160本/c㎡の方の場合達成密度が33%と説明されても実際には80×0.95÷3=25% になります。
( ケース2 )
ドナーの密度がケース1より1割低い72FU or 144本/c㎡の方の場合達成密度が33%と説明されても実際には72×0.95÷3=23% になります。
( ケース3 )
反対にドナーの密度がケース1より1割高い88FU or 176本/c㎡の方の場合達成密度が33%と説明されても実際には88×0.95÷3=28% になります。
このようにドナーの面積対うえつけ部の面積で説明される達成密度の数字は相対的なものであり、いつでも一般の達成密度の数字よりも過大になります。33%を2回行なって理屈でいえば植毛の目標値をはるかに上まわったはずなのに、実際にはとても薄くみえるのはこのためです。
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